DONE the DEAL ~ローコストによる”賭け”に出たASRoma~

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この冬のメルカートでリヨンからMFクレマン・グルニエ(26)を今シーズン終了後までの無償レンタルで獲得したASローマ。この取引ではASローマの現体制のフロントによる交渉力が評価された、特に僅か350万ユーロでの買取OP条項を盛り込んだことは大きい。将にこの取引で”ローコストによる賭け”に出たのだ。

ワルテル・サバティーニがSDを務めていた時期にはメルカートで数多くの失敗を目の当たりにしてきた(ドゥンビア、イトゥルベなどメルカートで獲得してきた選手が揃って結果を出せなかった)。今回のクレマン・グルニエ獲得とは比べのものにならないほどの酷さだった。


先月に26歳になり、キャリアの成熟期を迎えつつある彼は攻撃面でのクオリティが高いMFである。リーグアンや欧州カップ戦の舞台での経験を兼ね備えており、もう一度トップコンディションを取り戻したいという野心に満ち溢れている。

彼は今シーズンのASローマの中盤に足りなかったものをもたらしてくれるだろう。中盤センターでのクオリティが大きく欠けているチームの現状を考慮すると、フロントにとって彼の獲得は当然の判断だったと言える。


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・ASローマのフロントがこの冬のメルカートで最高の掘り出し物を獲得したと言うことができるだけのクオリティが彼にあるのか。

グルニエの起用は単なる1つのオプションにとどまらない。彼はパスセンスがあり、そして自らドリブルで持ち上がることもでき、ボックス内やバイタルエリアで決定的な違いをもたらす。今シーズンは怪我の影響でリヨンでは出場機会に恵まれていないためFKを蹴る機会はまだ無いが、彼のFK精度の高さには定評がある。セットプレーの局面で今シーズン開幕前にチームを去ったミラレム・ピャニッチの穴を埋めてくれる存在になり得るだろう。


ただこれまでリヨン一筋でプレーし、リヨンを去ることを考えていなかった彼にとって、様々な局面でディテールにこだわった戦術を施してくるカルチョの世界、そしてスパレッティの戦術に馴染むまで時間はかかるだろう。


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また彼には度重なる怪我や感染症による病気で出場機会を失った過去がある。

12-13シーズンには靭帯断裂、15-16シーズンのプレシーズンマッチ(アーセナル戦)ではハムストリング負傷するなど、これまで様々な箇所における筋肉系の問題に悩まされてコンスタントには出場機会を得られていない。今はほとんど怪我から回復したようだが、今シーズン開幕前にエンポリから加入したマリオ・ルイが長期離脱を強いられたケースを考えると、グルニエがチームに合流するまでもう少し時間はかかるだろう。

それでもこれまで怪我や病気で苦しんできた彼がピッチに立ってプレーすることを誰もが望んでいる。将に彼のプレーを今のASローマが必要としているのだ。

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・彼がスパレッティの戦術にフィットすることができるのか。

彼は守備面での貢献度は低いが、攻撃面で今までにはチームには無かった新しい形を生み出すだろう。彼は縦へのドリブル突破力やシュートシーンへ直結するラストパスの供給に優れている。


彼の攻撃面でのクオリティを考慮するとナインゴランに替わるオプションにはなり得るが、デロッシやストロートマンが担っているような最終ライン手前の中盤2センターの役割には向いていない。もしかしたらペロッティに替わるオプションになるかもしれないが、グルニエの本職がウイングではないことを考えると少し厳しい。

ジェコの背後でプレーするナインゴランが負傷離脱した場合はグルニエが同じポジションをつとめるだろう。デロッシやストロートマンが負傷離脱した場合はナインゴランが一列下げてより守備的なポジションでプレーする可能性が高く、グルニエはトレクァルティスタ(トップ下10番)のポジションで起用されるだろう。

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グルニエはトレクァルティスタでのポジションしかカバーできないが、それでも彼がチームにもたらすクオリティは大きい。

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グルニエよりコンディション安定度が高く、クオリティの高い中盤の選手は数多くいるが、誰もこの冬のメルカートにはフリーでローン移籍しなかった。ASローマは彼の怪我に対するリスクを考慮して移籍金を抑え、かつ中盤のクオリティを向上させるという点でベストな取引をすることができたと言える。

スタディオ・オリンピコのピッチに立ち、完全復活を遂げる彼の姿をロマニスタは待ち望んでいるはずだ。

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